ツァータン
モンゴルの最北部の森林地帯“タイガ”のツァータンにトナカイを放牧するツァータン民族がいます。ゲルとは異なる“オルツ”と呼ばれる移動式住居にすむトナカイ遊牧民です。
ツァータンとは“ツァー=トナカイ”を飼う・持つ人、というモンゴル語の意味があります。
もともとは現在のロシア・トヴァ共和国のトヴァ民族であり、トヴァ語を話します。
モンゴル語とトヴァ語を使います。
トナカイを放牧し、トナカイとともに生活をするツァータン民族は普段はタイガの山岳森林地帯にいます。
夏季、トナカイの放牧でフブスグル湖付近に移動してくることがあります。ツァータンまでの道のりは遠いので、ツァータン族にあうことは難しいのですが、ナーダム祭の時や夏の放牧時にはフブスグル湖付近で出会えるチャンスがあるときも!
オルツ:木を組み合わせた骨組みに厚手の布を張って巻きつけたもので、移動もとても簡単です。中にストーブがあり、あたたかです。
ツァータンとトナカイ:ツァータンはトナカイのみを放牧しています。トナカイの角は漢方薬などとして珍重されるとても貴重なものです。肉や乳は食料として、皮はクツなどに利用されます。
もちろん交通手段としても大いに活躍してくれます。
荷物や人を乗せて森林地帯を進むことができます。
ツァータンにとってトナカイは家族でもあり、なくてはならない大切な動物なのです。
トナカイ
トナカイには立派な角が生えています。
春先にはその角を切り落とします。
角のないトナカイはちょっと三枚目。
堂々とした風格から愛嬌のある表情へと変わります。
春、子供のトナカイがお母さんトナカイにくっついて歩く姿は何ともいえず、とてもかわいらしいです。
厳しい寒さに強く、すこしだぶだぶとした皮にはもこもこっとした密集した毛があり防寒の役割を果たしています。
人間のおとなを乗せて森林地帯を進むこともできる強くて優しいトナカイです。
伝承 ツァータンにつたわる物語
ツァータンはモンゴルのなかでも秘境とされています。
森林地帯のタイガ・ツァータンに暮らすトナカイ遊牧民族。ツァータンにはある伝承があるそうです。
昔、はるか昔。とても貧しい4人家族がいました。
もうすぐおとずれるタイガの長く厳しい冬を乗り切るための食糧すらない状態が続いていました。
そんなある日の朝、家族がオルツの外に出てみると、一頭の野生のトナカイが佇んでいました。
家族は神様からの授かりものだと思ったそうです。
そのトナカイを大切に育て、その乳から乳製品を作り、厳しい冬を乗り越えたそうです。
それからトナカイの遊牧をはじめ、トナカイとともに生きるようになったそうです。
それがツァータン民族の始まりだと言われています。
タイガ・ツァータンに伝わる物語。
シャーマン 祈り
原始宗教のアミニズム(自然への畏敬・崇拝)。
その踊りや儀式によって自然の精霊との交信をすることができるというシャーマン。
そのシャーマンの儀式は夜に行われます。
太鼓とバチ、鳥のような装束。
精霊(オンゴット)が様々なことを告げてくれるという。
シャーマン(呪術師)は1時間以上にわたり、歌を歌い、身体を動かし、全身全霊でその儀式を行います。
自然への畏敬の念が伝わってきます。
神聖なこの儀式を見られる機会はあまりなく、また外部の人に見せることも珍しく、見学できることはとても幸運なことだとされています。